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【書籍】「神話と意味」クロード・レヴィ=ストロース

「神話と意味」クロード・レヴィ=ストロース

 

<所感>

矛盾点を凌駕する一つ上のレイヤーで物事をとらえることが弁証法のアプローチ。

著者は神話研究にこのアプローチを当てはめて、そこに意味を与えた。

曰く「外見上の相違点に不変の要素を追求する」。

これが構造主義

 

17世紀の「科学」の出現後に、構造主義に基づいた神話研究で神話の重要性に光をあてたことは驚くべきことだ。

神話を迷信として一瞥することは簡単である。

ただし神話の物語が世界中で反復して現れる(もちろんそこに違いはある)ことを忘れてはいけない。

自分の故郷の神話はどこまで知っているだろう?

 

イギリスの歴史学者トインビーの言葉「自国の歴史を忘れた民族は滅びる」は重い。

 

余談。

著者の母語はフランス語。しかし本書は著者が英語で話した内容が元となっている。

そんな言語的な制約がある&口語ということで分かりやすい内容。

言語的制約は文章に簡便さを与えるという好例。

 

<目次>

まえおき

1 神話と科学の出会い

2“未開”思考と“文明”心性

3 兎唇と双生児——ある神話の裂け目

4 神話が歴史になるとき

5 神話と音楽

 

【書籍】「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」アンドリュー・S・グローブ, ベン・ホロウィッツ

 

「HIGH OUTPUT MANAGEMENT(ハイアウトプット マネジメント)」

アンドリュー・S・グローブ, ベン・ホロウィッツ

 

<所感>

マネージャーの仕事を一言で語ることは難しいが、本書の定義はシンプルである。

1.マネージャーのアウトプットは自分の組織のアウトプット。

2.マネージャーの生産性はその組織のアプトプットを多くすること。

 

マネージャーが着目すべきは自分が影響を持つ組織の成果。これに尽きるという。

その手段としてMTGが重要と説く点は、「25%の時間をMTGに使う組織はダメ」といったドラッカーとは対照的。

本書はMTGには2つの目的と内容「プロセス中心(→情報共有)」と「使命中心(→意思決定)」があり、このために時間を割くことは大事と言っている。特に前者のためにOne on One MTGは大事な手法の一つと位置付ける。

 

また、特に人事考課においては上司と部下と言う関係は必須とある。

本書は例えば「リーダーの仮面」で語られるマネジメント像とは相反する点が多いが、人事的な上下関係の重要性は共通している。自分が上司になってよいのか?、そのような自己疑念はマネジメントには害しかない。

 

何度も読み返す価値のある名著。

 

<目次>

  • 序文
  • イントロダクション
  • 第1部 朝食工場

1章 生産の基本

2章 朝食工場を動かす

3章 経営管理者のテコ作用

4章 ミーティング

5章 決断、決断、また決断•理想的なモデルは

6章 計画化

  • 第3部 チームの中のチーム

7章 朝食工場の全国展開へ

8章 ハイブリッド組織

9章 二重所属制度•工場保安係はどこに所属すべきか

10章コントロール方式

  • 第4部 選手たち

11章 スポーツとの対比

12章 タスク習熟度

13章人事考課

14章 ふたつのむずかしい仕事•面接

15章 タスク関連フィードバックとしての報酬

16章 なぜ教育訓練が調子の仕事なのか

  • 最後にもうひとつ――これからの行動指針チェック・リスト

【書籍】「リーダーの仮面」 安藤広大

「リーダーの仮面~「いちプレーヤー」から「マネジャー」に頭を切り替える思考法」

安藤広大

 

<所感>

リーダーのマネジメント論の本。リーダーはリアリスティックに徹しよ説く。

 

リーダーが集中すべきは5つのみ→「ルール」「位置」「利益」「結果」「成長」。

しかし、いくつかはなかなか受け入れがたく、非情なリーダー像が浮かんでしまう。

「位置」:上下関係を前提としたコミュニケーション」

「結果」:プロセスは評価せず、結果だけを見る」

 

このリーダー像が受けいれられる会社はどんなところだろう?会社の規模によって異なるのか否か。

著者が経営する会社の今後の成長がその答えとなるだろう。

この中で最も困難なのは目標値の設定と思う。

リーダーにどこまで決定権があるかによるし、本質的には経営者が明確な目標を持つことができるのか。

その点にも言及して欲しかった。

 

ただし、上記の5つの視点の根底には「部下(社員)の人生に責任を持ち、稼ぐ力を身につけさせてあげる」というスタンスがある。このことは重要である。

 

気になった文章。

・寄り添うリーダーは、成長の止まっている状態を正当化する

・ホウレンソウで見るべきは「次にどのような行動をするか」

・リーダーは先頭の鳥ではない。それはトッププレーヤー。リーダーはさらに上から俯瞰。

 

<目次>

はじめに なぜ、「リーダーの言動」が大事なのか?

序章 リーダーの仮面をかぶるための準備 ── 「錯覚」の話

第1章 安心して信号を渡らせよ ── 「ルール」の思考法

第2章 部下とは迷わず距離をとれ ── 「位置」の思考法

第3章 大きなマンモスを狩りに行かせる ── 「利益」の思考法

第4章 褒められて伸びるタイプを生み出すな ── 「結果」の思考法

第5章 先頭の鳥が群れを引っ張っていく ── 「成長」の思考法

終章 リーダーの素顔

「おわりに」に代えて ── 私たちの成長の話

【書籍】「こう読み直せ! 日本の歴史」宮崎 正弘

「こう読み直せ! 日本の歴史」宮崎 正弘

 

<所感とメモ>

①高志(こし)国

7世紀中盤まで大和政権の統治が及ばない地域あった国。今の福井、石川、富山、新潟、山形。高志→こし→越。なので、福井は越前、富山は越中、新潟は越後(京都に近い位置が「前」となる)

そいや富山県では黒部市に高志野中学校があった(今は統合で改名)し、富山市に水橋高志園町という地名がある。

 

古事記

皇族や祖神の抗争、裏切り、色事も満載。古事記天皇家の正当性や権威性を高めるというのは中身を読んでない人。(条約を読まずに安保反対と叫ぶ人は同類)

 

③尼港、通州、通化事件

近現代に邦人が犠牲になった猟奇的虐殺事件。

これらの事件を無視する近代史研究家は信用できない。

 

<目次>

第一章 縄文の古代から古事記日本書紀まで

第二章 白村江から元寇まで

第三章 桶狭間から徳川幕府滅亡まで

第四章 明治維新前夜から西南戦争まで

第五章 日清・日露戦争から大東亜戦争・新冷戦まで

おわりに サクっと分かる「日本史の真実」を求めて

 

【書籍】「ビジネスと人生の「見え方」が一変する 生命科学的思考」高橋祥子

「ビジネスと人生の「見え方」が一変する 生命科学的思考」高橋祥子

 

<所感>

一言でいうとシンプルに良い本。

生命化学分野のPhDの経営者ならではの視点が満載。

生物学的見地に立脚し、人はどうあるべきか?という指摘が示唆に満ち溢れ、また多角的な視点を提供してくれる。

 

本書を貫く提言は「生物学的には思考停止はエネルギー効率化となる正しい省エネ行為。しかしそこに抗い、思考し行動することは人類の希望」という点。非効率に見える行為(=思考や行動)こそが大事だと。

 

特に印象的なトピック。

1.課題解決

課題解決には客観的な情報に加えて、主観的な要素も必要。

また課題解決を進めるには他社の巻き込みが必要であるので、課題の先にどんなストーリーを描くことができるかが重要。

 

2.多様性

「何が違うか」を注目する一方で「何が同じか」という同質性にも注目することが重要。

企業における多様性は、多様性を作ることを目的とせずに、ある目的を達成したという同質性をもったメンバーで、環境変化に対応する手段として多様性をもつことが本来の多様性。

つまり多様性といって企業が女性管理職の人数を増やすというのは目的の手段化に過ぎない、と、著者(女性)は言い切る。

 

3.人と比べる

人生の充実度に大事なのは生命変化(生まれてから死ぬまで)の間にどのような行動変化(個人の社会活動の変化)を起こしたか。あくまでも自分の時間軸でどうありたいか、どう過ごすかを決める。同じ年の人が活躍していたとしても、その人と自分の行動変化の時間軸は異なるので、比較することに意味はない。

 

<目次>

◎目次

第1章 生命に共通する原則とは何か ―客観的に捉える―

第2章 生命原則に抗い、自由に生きる ―主観を活かす―

第3章 一度きりの人生をどう生きるか ―個人への応用―

第4章 予測不能な未来へ向け組織を存続させるには ―経営・ビジネスへの応用―

第5章 生命としての人類はどう未来を生きるのか

 

 

【書籍】「デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場」河野啓

「デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場」河野啓

 

<所感>

「何もしないくらいなら何かした方がよい」という行動至上主義に一石を投じる。

ただし、その主義が生み出された一端は著者によるもかもしれない。

いや一端ではなく発端だったのかも。

 

主人公の栗城氏の功績は「七大陸最高峰単独無酸素で登頂を目指す」という、多くの人には心に刺さりがちが言葉を生み出したことだろう。間違いなく人を巻き込む力はあった。そしてそれが全てだった。

 

<目次>

序幕 真冬の墓地

第一幕 お笑いタレントになりたかった登山家

第二幕 奇跡を起こす男と応援団

第三幕 遺体の名は「ジャパニーズ・ガール」

第四幕 エベレストを目指す「ビジネスマン」

第五幕 夢の共有

第六幕 開演! エベレスト劇場

第七幕 婚約破棄と取材の終わり

第八幕 登頂のタイミングは「占い」で決める?

第九幕 両手の指九本を切断

第十幕 再起と炎上

第十一幕 彼自身の「見えない山」

第十二幕 終演~「神」の降臨~

最終幕 単独

あとがき

 

 

【書籍】アルツハイマー征服 下山進

アルツハイマー征服」下山進

<所感>

サイエンス系ノンフィクションではサイモン・シンの「暗号解読」「フェルマーの定理」「宇宙創成」に並ぶ読むべき本。

ただしアルツハイマーが題材ゆえに悲しくも人間味が満載である。内容は本当に現在進行形の話。

本書は非常に章が多い。そのためテンポよく複数の物語が進み、読み手を飽きさせない。著者のジャーナリスト能力は言うに及ばず、純粋に筆力が素晴らしい。

印象的なエピソードは2つ。

エーザイが米国の製薬会社スクイプに販売権の渡す交渉の際に、先方に選択権がある状況を回避するために生理前のデータを提出した話。これはエーザイの担当者もさることながら、選択権がありつつも判断のためのリテラシーは重要であることを教えてくれる。

②優秀であり遺伝子工学の最前線にいたアルツハイマーの研究者ラエ・リン。しかし彼女自身がアルツハイマーを発症し、研究の舞台から去る話。現在の彼女は一人の認知症患者。

新薬を生み出すには能力とそして多くの運が必要である。どれだけ優秀でも何もできず敗れ去る人が大半(そんな人も本書ではちゃんと書かれている)

自分が研究した病気が退場の引き金を引く。あまりに非情だが、そんな現実もしっかりと書かれている。

 

<目次>

プロローグ まきがくる 

第1章 二人のパイオニア 

第2章 セレンディピティ

第3章 アルツハイマー病遺伝子を探せ

第4章 捏造の科学者 

第5章 アルツハイマー病遺伝子の発見

第6章 有意差を得ず

第7章 ハツカネズミはアルツハイマー病の夢を見るか?

第8章 アリセプト誕生  

第9章 ワクチン療法の発見 

第10章 AN1792

第11章 ラエ・リン・バークの発症

第12章 特許の崖

第13章 不思議な副作用

第14章 バピネツマブ崩れ

第15章 アミロイド・カスケード・セオリーへの疑問

第16章 老人斑ができないアルツハイマー

第17章 発症の前を探る

第18章 アデュカヌマブの発見

第19章 崖を落ちる

第20章 さらばデール・シェンク

第21章 遺伝性アルツハイマー病の治験

第22章 私にお手伝いできることはありませんか

第23章 中間解析

第24章 勇気あるスピーチ

エピローグ 今は希望がある