「高熱隧道」吉村昭
<所感>
隧道(すいどう)…トンネル。「ずいどう」とも言う。
現・関西電力の黒部川第三発電所の水路トンネル完成に至る工事における苦難を書いた小説。
苦難の最大の原因は現場が山奥にあるではない。
トンネルの建設現場に高熱の断層があったことだ。トンネル工事に必須の発破で使用するダイナマイトがその高熱で自然発火が続いた。
そこに雪山特有の自然災害も含まれ、犠牲者が多発する難工事となった。
あくまでも小説(フィクション)ではあるが、果たしでどこまでがフィクションなのかと思わせる。
黒部川第三発電所の実際の工事は1940年に完工。そして本書は1967年発刊。
現代ならばコンプラ違反で即工事中止となる現場の決断も多いが、その決断に至る経緯や苦渋の判断があまりに生々しい。
黒部川の工事と言えば「くろよん」こと黒部川第四発電所建設と思っていたが、それ以外にもあった。
電気の重要性を再確認できる作品。
とにかくその現場を感じさせるなあ。