<所感>
人事のあーだこーだを書いた本。部隊は銀行。
思うのだが、この社内人事が主軸として書かれる本はどうして銀行が多いのだろう。
メーカーだとなんだか迫力がない、商社だとビジネスが多岐にわたるので一本鎗に書けないからと想像する。
また一方で、銀行という社会の血液であるお金を扱うという、その事業内容自体がある意味で民間企業の頂点に君臨するからかもしれない。
「銀行は晴れの日に傘を貸し、雨の日に取り上げる」
「部下の手柄は上司の手柄、部下の失敗は部下の責任」
銀行に関する名言(?)が多いのもそのせいかもしれない。
他の理由としては、銀行のその人事に特徴があるからだろう。
本書にも書かれているが、銀行の人事は社長が頂点のきれいなピラミッド。
50歳前後で肩たたきが始まり、グループ会社や取引先へ出向となり、その時点で銀行内での出世競争は終わり。
また同じ銀行出身者がグループ企業にいた際には、銀行内での最終ポストが重要。
本書はご多忙に漏れず、部下の手柄は~を体現する話。頭取(社長)を目指すために利用できるものは利用し、頂点に上り詰めるビジネスマンの物語。本書にモデルが存在するのかわからないし、なんとなくいろんな銀行の物語をミックスさせている印象。
それでも、とても生々しく感じることができるのはまさに筆力のおかげというべきか。
これ、銀行出身者ならもっと感じるだろう。
しかし、個人的に銀行の未来は暗いと感じている今、これを読むと銀行希望者が減ってしまわないものかと、老婆心ながら心配になる。
銀行という業態は残るだろうけど、その存在価値、位置づけ、社員の待遇は10-20年後は激変しているだろうなあ。