<所感>
世紀の難問「ポアンカレ予想」を証明したロシアの天才数学者ペレルマンのノンフィクション。ポアンカレ予想がどのように証明されたというよりも、ペレルマンがどうして人前から姿を消したのか、その人生にフォーカスした本。
ペレルマンはユダヤ人であるが、旧ソ連時代にユダヤ人がどのような環境に置かれていたか、その点が克明に描かれている。
ちなみに著者はペレルマンと同時代に旧ソ連の数学エリート教育をうけた女性。(この方もユダヤ人!)。そんな経歴の方でなければこの本は書かれなかったのだろう。
現在、現実世界とのコンタクトをほぼ100%断絶したペレルマン。いつにか唐突に他の正規の難問を解き、人類の知性を一歩前進させるのだろうか。
なお、翻訳は青木薫氏。理学博士の彼女の本は非常に面白いものが多い。ハズレがない。
(サイモン・シン「フェルマーの最終定理」とか)
<メモ>
ペレルマンの人生に影響を与えた重要人物の一人がルクシン。ペレルマンが10歳のときにはいった数学クラブの先生。ペレルマンに「考えることを教えた」
また、数学クラブ在籍時の旧ソ連の数学オリンピック出場の選考試験で、ペレルマンは成功よりも信念を大事にするようになった。理想に合わない外界には目をつぶり、理想を追い求める。その結果、自分だけの規則に従う世界に生きるようになる。
そして、現実との接点は限定的となっていった。