「わたしは灰猫」青山繁晴
<所感> 純文学である。
尚、純文学と小説の違いは明確で個人的には以下のように定義する。
小説・・・間接的または直接的に著者が読者の感情をある一定の方向にもっていく意図がある。
純文学・・・上記の意図がない。少なくとも明示されない。読了後は「?」という気持ちになる。
本書の読了後は、定義に基づく感情が生まれる。 本書は瑞々しい情景の中に、著者のぼんやりとした不安感といえる人生観が断片的にちりばめられている。象徴的なのは、亡き夫が硫黄島からの帰還兵という設定だろう。 その戦いの意義は何だったのか?しかしどんな風に解釈されたか? そんな示唆に富む。 ある村である老婆に出会う。そしてのその場所が自分の縁のあるところであった。 人生を振り返るときっとそんな場所はいくつもあり、そして忘却の彼方にある。