<所感>
日本の重要な政治的課題は得てして隠されている。その代表例が世代間格差
例えば年金の世代間格差の現状は明かであり、その格差が拡大することは明確(注:自分は年金は不要論という立場ではない)。
ただし、そんな世代間格差は目の前の選挙の票には結びつかないので、政争の論点になることはない。
そんな世代間格差がコロナ禍に乗じて、加速すると説く2020年11月発刊の一冊。
社会保障の危機的課題をコロナ禍の情勢を踏まえて分析する本書は、現役世代こそ考えるべき。
1.コロナ禍おける経済と安全
もちろん最初から万全の対策はなく、後手を指摘することは誰でもできる。ただし大事なことは経済と安全の両立が必須。経済的ダメージは自殺者数にそのまま反映するので。
そうであれば死亡率も極めて低い現役世代には過度な行動制限は無し&給付金が必要。高齢者はその逆。
2.年金改革
だいたい5年に一度見直される年金改革。逆に言うと一度見直すと5年間は考えなくてよいというもの。
年金の問題は「2000万円問題」ではない。本質的な年金改革がされていないこと。
年金改革のポイントは2点。①保険料の引きあげ(現役層の負担)、②高齢者への年金カットの両者をすること。しかし実施されているのは前者のみ。
後者がされない理由は年金カットには「マクロ経済スライド」という条件があるため。これはデフレ時には年金をカットしませんよというもの。つまりいまだ完全にデフレを脱却してない日本においては、保険料が上がっているだけの状態。
現役世代はもっと声を上げる必要がある。さらに言えば投票権のない世代はさらに負担を押し付けるだけ。
3.財政破綻リスク
本書は必要な時には財政赤字を増やす勇気が必要というスタンス。ただし、コロナ収束後には財政健全化が必ず必要と強調。この点は違和感。
日本の財政破綻リスクは世界的に非常に低い。またインフレ率はずっと2%未満。すぐに出口戦略を論じることは財政赤字(=国債発行)の勇気を阻害する要因につながると感じる。
<目次>
第一章 「日本の借金」はどのくらい危機的なのか?
第二章 「強い社会保障」は実現可能か?
第四章 年金改革は、第二の普天間基地問題になるか
第六章 介護保険財政の危機と待機老人問題
第七章 待機児童問題が解決しない本当の理由