「ケニア! 彼らはなぜ速いのか」中鉢信一
<所感>
10~11年ぶりに再読。以前読んでいた状況を思い出す。
そのとき都内から京都への出張をしていた。早朝に京都駅に到着し朝からやっている近くにあったジムのプール行って軽く泳いで、打合せに向かった。そのジムの更衣室で着替えている時、この本がバッグから見えていたようで、隣にいた人に「私も読みましたよ」と言われた。その方は市民ランナーで、数十秒の会話だったが、ランニングという共通言語の面白さを感じた時間だった。
本書はケニア人、中でもカレンジン人という特定の地域のランナーが速いな謎に挑んでいる。
結論は複合的な要因かもしれない、しかし正直よくわからないというもの。一般的に言われている「高地での生活」や「子どものころから走って学校に通学」は要因の一つに過ぎないと、複数の研究者の見解を交えて説く。
印象的なポイントは2つ。
① 身近に速いランナーがいて、自分もそうなれると信じぬくことの重要性の示唆。1マイル4分の壁を切ったバニスターのあとに、複数のランナーがこの壁を切った事例にあるように、心理的な要素は多分に影響があるようだ。自己暗示、自分を信じる。この力は大きい。
② 速さの理由を追うためだけの研究費の獲得は困難。研究には資金が伴う。その研究目的が、資金提供者側(スポンサー)の不利益の可能性があるものであれば、当然資金は拠出されない。純粋な研究もビジネスからは逃れられない。このような理由で敢えて手が付けられていない研究分野は数多あるのだろう。
<目次>
第1章 グレートリフトバレー―プロローグ 略奪者カレンジン
第2章 グラスゴー―遺伝子狩りと科学者の夢
第4章 ロンドン―科学とスポーツ
第5章 カプサイト―キャンプという独特の仕組み
第6章 モンバサ―彼らが走る理由
第7章 エルドレット―競争心にあふれたメンタリティー
第8章 東京―エピローグ 謎解きの行方