「世界最古の日本国憲法」三山 秀昭
<所感>
端的に言って良書。
本書は政治家でもまして憲法学者でもない人が書いたという点でよい。
著者は元政治記者であるが、派閥記者が永田町記者でもない印象を受ける。
そのために、憲法はこうあるという「べき論」ではなく、事実が中心書かれている。
世の中に数多の学問があり、日本にも多くの分野で「学者」がいる。
それぞれの学問分野やその学者は尊重されるべきと思うが、唯一、日本の憲法学者の意義には疑問がある。
決して日本国憲法は一字一句全てが正しいという視点に立脚し、もしその解釈が実態と乖離があっても決して憲法に不備があるとは言わないということだ。
これは宗教学であれば神が創った教典を不変真理とするのは理解できる。
憲法は神が創造したのか?
憲法というと9条に着目される。これは非常に重要なのだが、憲法の改正手続について規定した96条の存在理由が尊重されないといけない。
(最も、憲法に尊重しなくてよい条文はないのだが…)
改正規定が定められているのに、改定の議論すらしない(させない)現状はそもそも憲法を蔑ろにするものであり、立憲主義でもなんでもない。
改憲、加憲、創憲等の憲法学者の言葉遊びは無視して、議論する。
この一歩のために、本書は読むべき価値がある。
個人的に天皇の国事行為を規定した7条の矛盾点*は初耳でためになった。
*憲法では国事行為の4番目に「国会議員の総選挙の施行を公示すること」と規定されている。
しかし、参議院は憲法46条において「…三年ごとに議員の半数を改選する」とあり、全ての議員が対象の選挙である「総選挙」は実施でず、矛盾が生じている。
<目次>
「世界最古の日本国憲法」
戦後政治の“振り子現象”
村山政権の歴史的解釈改憲
歴代政府、裁判所による解釈改憲の変遷
堂々と改憲を唱える野党「おおさか維新の会」
憲法を添削、採点してみよう
いわゆる「巻き込まれ論」について
では、どうする?