「日本人が知らない「スーホーの白い馬」の真実」ミンガド・ボラグ
<所感>
「中国の北のほう モンゴルには 広い草原がひろがっています」
スーホーの白い馬といえば自宅に絵本があった物語。出だしは今も覚えている。
記憶がないが教科書にも掲載されているらしい。
とにかくモンゴルが舞台の話としては抜群の知名度の知名度があるだろう。
ただしその中身はモンゴル現地の文化、慣習と比較すると不自然な点*が多い。
*競技大会が開かれた目的、大会が開かれた時期、スーホが子馬と出会った時間帯など
どうしてか?
モンゴル出身の著者がその謎や真実を都市伝説的ではなく学術的に解き明かしている。
著者の調査によると「スーホーの白い馬」、そしてその原典の「馬頭琴」には当時の政治思想が深く影響して創作されたからという。
これは牧畜民の階級意識を高める思想教育のために使われたということである。
つまり共産主義のプロバガンダの産物の物語と結論付けられている。
この物語のせいだけではないだろうが、モンゴルに対するプロバガンダは成功しているようだ。
その結果、牧畜民を無視した「禁牧政策」などモンゴル民族文化をゆがめる事例が多発し、文化ジェノサイドが進行中という。
そうであるならば「スーホーの白い馬」の神髄は本当のモンゴル文化を知る契機となることだと思われる。
一方でこの物語の政策背景にはある特定の政治的イデオロギーがあること、および、これは文化侵略の一つの事例であることを忘れてはならない。
<目次>
第1章 「スーホの白い馬」が日本に伝わった背景
第2章 階級闘争的な中国の創作文学
第3章 プロパガンダにゆがめられた民族文化
第4章 「スーホの白い馬」が伝えるモンゴル文化
第5章 満洲国から中国へ、翻弄され続けるモンゴル民族