<所感>
神道は宗教というより慣習に近いものだと感じている。
しかし仮に神道を宗教としたときにそこには開祖や教義、経典がないことは他の宗教
と比較するととても特異と言える。
仏教、キリスト教、イスラム教といった宗教と違い無い無い尽しの神道。
これこそが神道の本質であり、神道とは「ない宗教」である著者は語る。
そして「ない宗教」だからこそ仏教のような開祖や教義が「ある宗教」が日本なかで
共生されてきたという視点は興味深い。
ではもしキリスト教やイスラム教が日本に早くから伝来していたら?
その場合は神道との共生は難しかっただろう。
一方で、神道では唯一神はなく八百万の神々がいる多神教で、何よりも人を神として
祀る。
これは仏教の成仏(=現世で悟りを開いで仏になる)と親和性が高い。
最も、本書には靖国神社の解釈など疑問を禁じ得ない記載がいくつかあるが、日ごろ
の生活に浸透した神道を考えるうえで参考となる本と言える。
<目次>
「ない宗教」としての神道
もともとは神殿などなかった
岩と火 原初の信仰対象と閉じられた空間
日本の神道は創造神のない宗教である
神社建築はいつからあるのか
「ない宗教」神道と「ある宗教」仏教との共存
人を神として祀る神道
神主は、要らない
神道は変化を拒む宗教である
遷宮に見られる変化しないことの難しさ
救済しない宗教
姿かたちを持たないがゆえの自由
浄土としての神社空間
仏教からの脱却をめざした神道理論
神道は宗教にあらず
「ない宗教」から「ある宗教」への転換
神道の戦後史と現在