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【書籍】「中原中也 (日本語を味わう名詩入門)」 荻原昌好 編

中原中也 (日本語を味わう名詩入門)」 荻原昌好 編

 

中原中也は「汚れちまった悲しみに…」で有名で夭逝した詩人。そんな印象だった。

しかし彼の詩にまともに触れたことはなかったので本書を手に取ってみた。

 

総じてその詩の行間にはもの悲しさと寂しさが見え隠れする。

色ならばモノクロというか紺清色。しかしどこかで共感できる。だからこそ味わいがある。

 

「生い立ちの歌」

幼年時

私の上に降る雪は 真綿のようでありました

少年時

私の上に降る雪は 霙(みぞれ)のようでありました。

・・・

 

自分の人生の各時代の心境や状況を様々な雪の状態で表現した詩。

単純に方法論としての表現が秀逸。

しかし一方で、いずれの時も「降る雪」になぞらえざる点が作者の孤独感を表している。

 

「頑是ない歌」

思えば遠くへ来たもんだ

十二の冬のあの夕べ

港の空に鳴り響いた

汽笛の湯気は今いずこ

 

どこか地方にいた一人の人間が人生の時を経る中で、あの頃を思い出し、そして今を見つめる。

今はどうしてここにいるのか?なんとかやってきた?これからどうする?どうなる?

あのころの自分の思いは今につながっているか?

地方からでてきて都会で生活をする一般的な人々の胸に刺さる。

つまり自分の旨に刺さる。

本書の中で最もお気に入りの詩。

 

「少年時」

夏の日の午過ぎ時刻

誰彼の午睡するとき、

私は野原を走っていった・・・

 

eastern youth吉野寿氏は中原中也を愛読していると聞くが、この詩を読むとそれがうなづける。

限りなくeastern youthの歌詞である。

いや、逆だ。中原中也を受け継ぎ歌うバンド、それがeastern youthだ。

 

「月夜の浜辺」

月夜の晩に、ボタンが一つ

波打際に、落ちていた。

 

eastern youth吉野寿Husking beeの磯部氏に日本語歌詞の重要性を説いた後。

そこでできた曲が「欠けボタンの浜」。この曲の歌詞は「月夜の浜辺」の歌詞そのものである。

ちなみに「ボタン」は服のボタンなのか、それとも他の意味があるのか。

この詩からはわからない。

しかしボタンにひたすら固執し執着するする様子が書かれるこの詩が暗示する何かを味わうことにおいてはボタンの意味はなんでもよい。