「わたしで最後にして―ナチスの障害者虐殺と優生思想」藤井克徳
<所感>
ナチスによるユダヤ人の大虐殺は有名だが、そのリハーサルと言える虐殺があった。
優生思想のもとに障害者を多少にした虐殺で、「T4作戦」と呼ばれている。
犠牲者は20万人あまり。
しかしドイツではユダヤ人大虐殺と異なりほとんど話題になることはないという。
それは対象が障害者であることが特徴的なためで、理由は2点。
1.被害者家族の立場:身内に障害者がいることは公にしたくない
この2つの理由はT4作戦特有ものではなく、どの国も同じであり、日本も例外ではない。
2016年におきた「やまゆり園事件」はその象徴であると筆者は語る。
じゃあ、これからどうしたらいいのか?この一歩目は現状を知ることだろう。
厚生労働省のデータでの身体障碍者(身体障害者、知的障害者、精神障害者)で合計約940万人。
これで合計1400万人。
しかし、厚生省のデータには発達障害や自閉症などは含まれていない。また、弱視や難聴の方も多くいる。
そして、二歩目は、障害者は社会の少数者とはいえないので、障害者を前提とした社会作りが必要と認識することだ。何よりも誰もが事故や病気でその障害者になる可能性があるという点は忘れてはならない。
P.S. T4作戦ではドイツ中西部にあるハダマーに当時の安楽死施設が残されている。
<目次>
第1章 オットー・ヴァイトとの出会い
第2章 殺された障害のある人は20万人以上
第3章 優生思想は多くの国々で、私たちの日本でも
第4章 優生思想に対峙する障害者権利条約
第5章 「やまゆり園事件」と障害のある人のいま
第6章 私たちにできること