「自衛隊最高幹部が語る台湾有事」岩田 清文/武居 智久/尾上 定正/兼原 信克
<所感>
自衛隊の元最高幹部が台湾有事を想定して現実的なシミュレーションを実施。
映画「シン・ゴジラ」では日本の危機管理における意思決定プロセスの脆弱さがシニカルに表現されていた。
一方、本書ではもっとリアルな有事においてせまられる決断が生々しく書かれている。
戦後77年。8月15日に向けて毎年、あの戦争について語られる。
実体験者が少なくなるなかで、その人の証言は貴重だろうが、視点が一方的な面があることは否めない。
戦争の悲惨さと平和の大切さを願うだけでいいのだろうか。
本書のようなシミュレーションを踏まえて、実際には何をするか、しないといけないか。
そんな議論と行動がされないといけないだろう。
なお、後半では「有事の際には、尖閣、先島、台湾の3正面への対応が求められる。しかし、はっきりいって海上自衛隊は3正面に同時に対応できる能力はない」と書かれている。
本書は2011年11月の時点の内容なので、ロシアのウクライナ侵攻は考慮されていない。
となると有事の際にはさらに北方領土や北海道への対応も追加となり、4正面への対応が必要となる可能性が極めて高い。
では何が必要か。答えは見えている。見えているのに動かないのは何故か。
それこそが本当の有事と言える。
あ、あとあっち側の方々は、取り急ぎ憲法9条の条文を掲げて4正面の最前線に向かってくださいね。
<目次>
第1部 台湾有事シミュレーション
第2部 座談会―台湾有事の備えに、必要なものはなにか