「私の1960年代」山本 義隆
<所感>
1990年の後半に駿台予備校 お茶の水校3号館で浪人時代を過ごした。
物理の講師はいつもシャツを古びれジーンズにタックインしている人だった。
その浪人時代の最後の授業のときその人はこういった。
「大学に入ったらある学問を学ぶのではなく、その学問の領域を広げてください」
浪人時代から数年経ち、その先生が元東大全共闘代表だったこと知る。
その名は山本義隆。
最もまだ学生運動が何たるかを知らなかった。
本書では1960年代のど真ん中を歩んだ山本先生(敢えて「先生」と呼ぶ)が丹念に集めた当時の資料をベースに振り返っている。
また、その思想から科学技術(特に原子力発電)の発展が否定的なという山本先生の考えが丹念に述べられている。
1960年代のあの時の熱量を知る上ではど真ん中の人が書いたという点ではある種貴重な資料と言える一冊だ。
最もその熱量の根底には全く賛同できないが。
その理由は単純で、一見ロジカルに語られているようで実は自国の安全保障を意図的かつ頑なに無視しているからである。
P.S. ちなみに山本先生の書いた「磁力と重力の発見」(全3巻)は近代物理学成立の過程を追跡した科学史の良書。理系の学生の学部時代に読むべき書である。
<目次>
大学入学直後の六〇年安保闘争
高度成長と理工系ブーム
宇宙開発という政治ショウ
六二年の大学管理法反対闘争
地球物理学という学問
処分撤回闘争と時計台前座り込み
物理学会の米軍資金をめぐって
科学技術の進歩をめぐって
王子闘争の衝撃と所さんの死〔ほか〕