「モスクワよ、さらば―ココム違反事件の背景」熊谷独
<所感>
ココム違反事件・・・1980年代に東芝機械ココム違反事件。ココム(対共産圏輸出統制委員会)の規則に違反した工作機械をソビエトに輸出した事件。
この工作機械によりソビエトの潜水艦技術が向上した。
ココム違反事件は貿易会社からの内部告発により明るみなったが著者がその告発者である。
現在、ある製品や機器の輸出時にはリスト規制やキャッチオール規制といった安全保障貿易管理を遵守しないといけない。
(例えばリスト規制の対象の輸出には経済産業大臣の許可が必要)
輸出業には各種規制の準拠が必須。その通りだ。
しかし自分たちが正直に規制を準拠することで、他社にビジネスを取られしまったら?
まして、自組織がソビエト向けのビジネス強化を掲げていたら?
その中にいるひとりの会社員の立場でどこまで清廉潔白に対応できるだろうか。
何よりも本事件の根幹にあるものは安全保障に対する日本の認識の低さと感じる。
<目次>
第1章 事件の発端
第2章 水の都レニングラード
第3章 和光交易との訣別
第4章 KGBの役割
第5章 対ソ貿易の実態
第6章 ザ・デイ・アフター