「死刑のある国で生きる」宮下洋一
<所感>
「欧米諸国が人権の観点で死刑を廃止している。その潮流に合わせて日本も死刑を廃止すべき」という声がある。
果たしてそれが唯一の解なのかと考えさせてくれる本。
特に著者が指摘するのは欧米(の先進国)と日本の死生観の違いだ。
この違いは主に両者の主流の宗教に基づくものであり、他には文化・慣習の影響も大きい。
こういった点を軽視しし、潮流に合わせるべきというのは価値観の押し付けと言えるだろう。
西洋諸国が言うところの「人権」は全世界に適用される普遍的なものか?
どんなものにも理念と行動には矛盾がある。本書が指摘するフランスの現場射殺はこの典型例だ。
そういえば15年ほど前に読んだ大塚公子「死刑執行人の苦悩」を思い出す。
この本も死刑制度を問う内容であり、当時は感銘を受けた。
ただし、これはあくまでも一側面に過ぎないと本書「死刑のある国で生きる」を読んで感じた次第である。
良書だ。
<目次>
プロローグ 処刑まで、あと一カ月
第1章 生きた目をした死刑囚(アメリカ)
第2章 廃止する勇気(フランス)
第3章 憎む遺族と守られる加害者(スペイン)
第4章 死刑の首都にて(アメリカ)
第5章 失われた記憶と死刑判決(日本)
第6章 償いのために、生きたい(日本)
第7章 死刑は被害者遺族を救うのか(日本)
第8章 現場射殺という名の死刑(フランス)
エピローグ 死に向き合って、生きる