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【書籍】「破獄」吉村昭

 

「破獄」吉村昭

 

<所感>

破獄…囚人が牢獄を破って脱走すること。牢破り。脱獄

 

網走刑務所を含む4回の脱獄を実行した無期刑囚(佐久間)をモデルにした小説。

刑務所ごとに佐久間への接し方は変化し、その結果、佐久間とその関係者の心境なとても丁寧に書かれている。

「4回の脱獄」ということを念頭において読んでも、登場人物の心境に焦点を当てることで楽しむことができる。

 

また、時代背景が戦中戦後だがその混乱期の様子の克明さも特筆に値する。

とくに昭和20年以国民向けの主食の配給は米一人一日二合三勺。

そんな中、囚人には作業優先のため一日六合で、網走刑務所の広大な敷地は耕地にされて食料面は恵まれていた。

しかし看守の配給は国民向けと同じで、耕地の食物も囚人優先のため看守の食糧事情が悪く、囚人用食物に手を出すことが事件になったという。

 

ちなみに佐久間のモデルとなった囚人を調べると1979年に亡くなった模様。

そんな昭和の物語。