「エルサレム“以前”のアイヒマン―大量殺戮者の平穏な生活」ベッティーナ・シュタングネト
<所感>
そんなアイヒマンがドイツ敗戦後モサドに捕獲されますまでに膨大な文章と音声録音を残していた。(アルゼンチン逃亡時の文章はアルゼンチン文章と呼ばれ、録音はサッセン・インタビューと呼ばれている。)
この記録の中でアイヒマンは自己正当化をつらぬく。
アイヒマンの人間を考察したものは多く、普通の仕事をする能力が無い、ただ総統の命令に従い認められることが第一、それが自己顕示欲を満たしたということが定説となっている(はず)。
そんな一般社会人では無能だったアイヒマンがひとつだけ、そして愚直に職務として遂行したことがユダヤ人絶滅計画であった。
アルゼンチン文書やサッセン・インタビュイーは散在して散逸しているものも多い。
またアイヒマンの悪筆により解読は困難であるようだ。
ただしこういった記録があることで、人類史上に残る愚行の実態や背景がより鮮明に解き明かされるのだろう。
<目次>
序章
「私の名前は象徴となった」
1 有名人への道
2 ある名前の持ち主の戦後の経歴
3 名を隠して生きる不本意な生活
幕間劇
近東に残した偽りの痕跡
アルゼンチンのアイヒマン
1 「約束の地」での生活
2 祖国での戦線
3 友情のなせるわざ
いわゆるサッセン・インタヴュー
1 作家アイヒマン
2 討論におけるアイヒマン
偽りの安全
役の変更
終章