「フィネガン辛航紀 - 『フィネガンズ・ウェイク』を読むための本」 柳瀬 尚紀
<所感>
20世紀が誇る2大小説と言えば
(なお、いずれも20代のときに出会い挫折している)
そんなジェイムズ・ジョイスの最期の作品が「フィネガンズ・ウェイク」。
作品のテーマはどうも人類の意識が円環(終わりなく続く)ことである模様。
模様と言ったのはとにかく中身は難解すぎること。理由はジョイス語と呼ばれる世界中の言語を使った言葉遊びと表現方法で書かれているためである。
直訳がそもそもできない、訳してもジョイス語のエッセンスが反映できない。
この難攻不落の翻訳に立ち向かった著者による翻訳の極一部の解説と当時の思いが書かれたのが本書。
印象的なのはこんな無謀な挑戦を始めるんじゃかんかったと何度も述べられていること。
じゃあ辞めればいいのにと感じるそこに山があるから登るという志も伝わっている。
1)注意点
だからと言って翻訳が読みやすいということではない!。以下、参考。
有名な出だし:riverrun, past Eve and Adam's, from swerve of shore to bend of bay
柳瀬氏の翻訳:川走、イブとアダム礼盃亭を過ぎ、く寝る岸辺から輪ん曲する湾へ
2)余談
フィネガンズ・ウエイクの原書はriverrunという単語(しかも最初も小文字)から始まり、最後はtheで終わる。
これは最後のtheが最初のriverrunにつながり、本書のテーマの円環に通じているという。
ぐるぐる終わりなく続く。何度もループが回る。
その昔、とある24時間リレーマラソン大会に出場したときのチーム名をフィネガンズ・ウエイクから拝借したのはこれが理由。
<目次>
1 涽沌の巻
2 佳味噛みの巻
3 翳游の巻
4 姙幻の巻
5 混沌の巻