「がん征服」下山進
<所感>
非常に良書。
これまた良書だった「アルツハイマー征服」に続いての病気征服シリーズといったところか。
今回は癌であり、その中でも脳の癌である膠芽腫(こうがしゅ)がテーマ。
外科手術、抗がん剤、放射線がいずれも効果のない最強の癌だが、そんな膠芽腫の新治療法に挑む話。
本書が興味深いのは単純に治療の開発だけにとどまらず、薬事法や知見といった治療フェーズへの課題に焦点を当てていること。
本書のポイントは法的に薬の有効性を「証明」や「確認」ではなく「推定」となっていること。
なお、著者は敢えて直接的な言及は避けているが、ここには大きな政治力が働いたとしか邪推できない。
その成果を甘受しているのはBNCT法である。著者は丹念な取材に基づきその正当性の疑問点をキーマンの研究者に投げかけるが、回答は一切なし。ということは・・・。
本書や「アルツハイマー征服」読むと、著者は「暗号解読」「宇宙創成」などを書いたサイモン・シンに通じるポテンシャルを感じる。
サイエンス系のノンフィクション作家と突き進んでほしい。
<目次>
原子炉でがんを治す
核医学という辺境から
汝を殺すもの、また汝を救う
免疫をつかさどる遺伝子を改変する
偽進行
光免疫療法の発見
腫瘍再発か脳浮腫か?
原子炉から加速器へ
三木谷浩史登場
有効性を確認する必要はない
投資家か事業家か
「条件付き早期承認」
BNCT、膠芽腫治験
ランダム化比較試験をとらず
局所進行再発頭頸部がん治験
BNCT膠芽腫治験フェーズ2
G47Δ、治験の内実 他