「グレート・インフルエンザ -ウイルスに立ち向かった科学者たち」(上・下)
ジョン バリー
<所感>
「スペイン風邪」の猛威と当時の科学者の奮闘があますところなく分かる本。
重要なことはこれは1918年の話。スペイン風邪の犠牲者を考察するとき、当時の人口を考慮する必要がある。この手の流行病を考えるうえで大事な指標は「過剰死亡者数」。(決して、陽性者数ではない)
1918~1919年の米国(人口1.1億人)の過剰死亡者数の推計は675万人。
2019年の米国の人口は3.3億人なので、2025満員が死亡したことになる。
ここからでもスペイン風邪の猛威が分かる
この犠牲者数を見ても人々の間に恐怖が蔓延することは容易に想像ができる。
しかし本書では官僚やメディアが恐怖を生み出すことに加担した点を指摘している。当時は病気の恐ろしさを過小評価して伝えることに尽力したという。
その結果、犠牲者が増えるという悪循環に。
結局大事なことは正確なデータを、事実を報告することである。
そのためには偏見のなく、また論じるに値するデータを入手することが第一歩。
そして、公衆衛生、薬学、統計学等の観点でそのデータを考察することが第二歩。
スペイン風邪から約100年後の今、第一歩目はできているのだろうか?
<目次>
(上巻)1群れ、2火薬庫、3始まり、4爆発、5流行病、6競争
(下巻)7戦い、8停滞、9終幕