「毛沢東の大飢饉 史上最も悲惨で破壊的な人災 1958-1962」ディケーター・フランク
<所感>
人類史上に残る虐殺と言えばナチスによるユダヤ人大虐殺でその人数は600万人。
そして主導者のヒトラーは民主的な選挙で選ばれた人間でもある。
一方で、独裁者が起こした大虐殺で、桁違いの犠牲者を出したのが毛沢東による大躍進運動。人数は少なく見積もっても推定でも最低4500万人。
当時の人口が約6.5億人とはいえ、そのうち4500万人って!
「大躍進運動」という響きのいい言葉でごまかされたその実態を、共産主義という言論統制が当たり前の中で本書は公式文章*をもとにあぶりだしているところだ。
*このような文章を档案(とうあん)と言い、档案館に保管されている。
そんな公式文章ではおぞましい数の人民が犠牲になったことが克明に書かれている。
例えば拷問の手口は自分の感覚では到底思いつかないものであり、中国大陸で古来よりあったものだろうと思わずにはいられない。
この観点で言えば、中国共産党が主張する、先の大戦時に日本軍が起こしたとされる蛮行というものは、彼の価値観(=自分たちがこうだから相手もそうするはずというもの)が生み出したものではと思わずにはいられない。
そして共産主義のイデオロギーの根底には平等があるはずである。
しかし実際にはヒエラルキーに基づく命令系統が構築されていることがこの事例からもよくわかる。
自国のすぐ側の国で、たった65年前にあった大虐殺。
そしてこの数年後に文化大革命(これまた奇妙な表現だが)が発生。
それが1949年建国で70数年の歴史の中華人民共和国という国の歴史だ。
<目次>
はじめに―「四千五百万の死」が意味するもの
第1部 ユートピアを追い求めて
第2部 死の谷を歩む
第3部 破壊
第4部 生き残るために
第5部 弱者たち
第6部 様々な死
終章 文化大革命への序奏