「憲法学の病」篠田英朗
<所感>
良書中の良書。
問題の原因を都合の良い解釈をして論理(らしきもの)を展開し、自説を肯定するのは詭弁の論法の一つ(これはストローマン論法)であるが、これが日本の憲法学の大本にあることを丁寧に指摘し、説明している本。
そこにあるのはまっとうな憲法論議や学術的な視点はなく、概念操作や開き直りだけだ。
例:日本の憲法学にとっての「戦争」・・・侵略者にとって攻撃された際の自衛行動も「戦争」。だから違憲。
→実際は「自衛権の行使」と違法化された「戦争」は別もの。
日本の憲法学にとっての「交戦権」・・・自衛戦争には「交戦権」なるものが必要。
→現代国際法で「交戦権」は存在しない。
世の中でいらない職業や学問があるとすれば筆頭は、“日本の憲法学の研究およびその学者“と思っていた。
しかし、著者は、歴代の東京大学法学部教授陣(宮沢俊儀や長谷部恭男など)やそんな教授陣と結びつきの強い憲法学者(高見勝利や木村草太など)のみを批判の対象としている。
その点で著者は非常に紳士的であり、ロジカルである。
日本国民はもちろんだが、国会議員は必読の書として頂きたい。
<目次>
本当の憲法9条1項「戦争」放棄
本当の憲法9条2項「戦力」不保持
本当の憲法9条2項「交戦権」否認
本当の憲法前文一大「原理」
本当の憲法前文「平和を愛する諸国民」
本当の憲法前文「法則」
本当の「集団的自衛権」
本当の「砂川判決」
本当の「芦田修正」
第2部 ガラパゴス主義の起源と現状
宮沢俊義教授の謎の「八月革命」
長谷部恭男教授の謎の「立憲主義」
石川健治教授の謎の「クーデター」
木村草太教授の謎の「軍事権」