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【書籍】「21世紀の啓蒙―理性、科学、ヒューマニズム、進歩」(上・下) ピンカー・スティーブ

「21世紀の啓蒙―理性、科学、ヒューマニズム、進歩」(上・下)

ピンカー・スティー

 

<所感>

良書中の良書。

これこそが大局観。そんな視点で世界を俯瞰された本。

「理性と共感によって人類の繁栄を促すことができる」という啓蒙主義の原則に基づき、世界の進歩否定主義をたしなめ、世界は良くなっていると著者は語る。

 

そのポイントは理性。そして理性を支えるものが科学。

ここでいう科学とはその要素として論理、立証と反証、抽象化をもつものだ。

 

例えば本書で書かれている「人類の歴史を通して暴力は減りつつあるというが、今朝、学校で銃乱射事件があったじゃないか」という考え方。

これは「減少」と「消滅」を混同した思考であって、減少は過去のとの比較からの論理的な結論である。

このような論理的矛盾を(もしかしたら意図的に)混ぜこぜにして世界が評価すること、またはそんな論調を是正するのが著者である。

 

悲観論を謳うこと、それは同時に救済策を提示する条件作りと言える。

そのような救済策を自己の利益誘導につなげることは容易だろう。

(この事例は巷間で目にすることも多い。新興宗教はこの典型例だろう)

そんな論調に対して科学的視点を踏まえた大局観を持つことはとても重要だ。

 

なお、本書は上下巻で1000ページ弱。非常にボリューミー。

この中で特に、第二章(人間を理解する鍵「エントロピー」「進化」「情報」)と第二一章(理性を失わずに議論する方法)は秀逸。

 

<目次(上下)>

第一部 啓蒙主義とは何か

 第一章 啓蒙のモットー「知る勇気をもて」

 第二章 人間を理解する鍵「エントロピー」「進化」「情報」

 第三章 西洋を二分する反啓蒙主義

 

第二部 進歩

第四章 世にはびこる進歩恐怖症

 第五章 寿命は大きく延びている

 第六章 健康の改善と医学の進歩

 第七章 人口が増えても食糧事情は改善

 第八章 富が増大し貧困は減少した

 第九章 不平等は本当の問題ではない

 第一〇章 環境問題は解決できる問題だ

 第一一章 世界はさらに平和になった

 第一二章 世界はいかにして安全になったか

 第一三章 テロリズムへの過剰反応

 第一四章 民主化を進歩といえる理由

 第一五章 偏見・差別の減少と平等の権利

第一六章 知識を得て人間は賢くなっている

第一七章 生活の質と選択の自由

第一八章 幸福感が豊かさに比例しない理由

第一九章 存亡に関わる脅威を考える

第二〇章 進歩は続くと期待できる

 

第三部 理性、科学、ヒューマニズム

第二一章 理性を失わずに議論する方法

第二二章 科学軽視の横行

第二三章 ヒューマニズムを改めて擁護する