<所感>
世の中でみると「天才」の称号を持つ人は一定数いるだろう。
しかし「歴史上の天才」となればその数は減る。
さらに修飾語を付けて「議論の余地がないレベルで歴史上の天才」とすると何人残るだろか。
天才リストに載る条件を絞り込んだとしても、最後までノミネートされる天才。それがフォン・ノイマンだ。
22歳で大学を卒業と同時に数学の大学院博士課程も卒業。そんな天才エピソードには事欠かない。
よって本書の副題「人間のフリをした悪魔」というのは、「天才ぶりがもはや悪魔じみたもの」の例えかと思っていた。
しかしその実態は、日本人によっては、文字通りの悪魔だった。
ノイマンは目的のためならば手段を選ばないという思想を持っていた。
原子爆弾の開発の中心メンバーだったノイマンが、早期に戦争を終わらせるために、歴史的文化価値の高いからこそ京都への原子爆弾投下を主張した。
それは日本人の戦意を少しでも早く喪失させよういう目的のためである。
この思想は原爆投下後の日本の惨状を嘆いたアインシュタインとは対極的だ。
非人道主義と科学優先主義をもった人間。これがノイマンの本質だった。
ちなみにアメリカが広島と長崎に原爆を投下した4年後、ソ連も核実験に成功。
これはアメリカ軍部の予想よりも10年も早い成功だったが、この理由は原爆開発で機密事項をまとめたノイマンの同僚がソ連のスパイだったから。
ノイマンの天才話とは別に非常に印象の残るエピソード。
<目次>
第1章 数学の天才
第2章 ヒルベルト学派の旗手
第3章 プリンストン高等研究所
第4章 私生活
第5章 第二次大戦と原子爆弾
第6章 コンピュータの父
第7章 フォン・ノイマン委員会