「病の皇帝「がん」に挑む - 人類4000年の苦闘」シッダールタ・ムカジー【著】/田中文【訳】
<所感>
2023年のベスト3に入る本。
壮大なるガンをめぐる人類の物語。
ガンと推定される症状は4000年前からあった。しかし、それがガンというものだとわかってきたのはかなり最近である。
ガンの大前提。
それはガンとは特体の病気ではなく、症候群であるということだろう。
ガンは細胞の増殖プログラムの暴走が共通項ではあるが、症候群という多様性を持つがゆえに普遍的な治療が難しい。
本書ではその対策は永遠に終わらないとまで述べている。
そんなガンと向き合ってた研究者や医者の奮闘が主であるが、そこには数多の患者がいたはず。
誰もが、もちろん自分も、いつかその一員になるだろう。
こうして人類の苦闘はこれからも続く。
このガンとの奮闘の歴史という広大すぎる海原を2冊にまとめた著者の筆力には圧巻する。
そしてこれを訳したのは翻訳家である医師の方。
こういう人がいるから日本語で本作に触れることができるのことだけでも感謝しかない。
<目次>
第1部 「沸き立たない黒胆汁」
第2部 せっかちな闘い
第3部 「よくならなかったら、先生はわたしを見捨てるのですか?」
第4部 予防こそ最善の治療
第5部 「われわれ自身のゆがんだバージョン」
第6部 長い努力の成果