「硫黄島上陸 友軍ハ地下ニ在リ」酒井聡平
<所感>
大東亜戦争時の日本本土の激戦の地のひとつが東京都の硫黄島(いおうとう)。
まず遺骨探索に参加するまでの意思と行動量が凄い。
未だ1万柱(←遺骨の単位は「柱」)以上残る遺骨だが、探索しても見つかるのは毎年数柱のみ。
風化もあるだろうが、そもそもなかなか探索させてくれない。
何が理由があるのではという筆者の疑念が硫黄島に核を持ち込んでいたであろうという日米間の密約に至る。
その信憑性はさておき、本書の意義は硫黄島が本土上陸の舞台だったと知らせることだろう。
先の大戦が語られるとき、沖縄は唯一の日本国土に上陸された舞台で、またあたかも捨て石になったかのような言説が多い。
(捨て石であれば沖縄線で特攻作戦は実施されなかったし、戦艦大和が沖縄に向かわなかったと思うのだが)
実際、上陸されたのは沖縄以外に東京であり、それが硫黄島だ。
硫黄島には住民はいなかったものの、兵士は市井の人が多数であった。
自分たちが、米軍の攻撃を一日遅らせることで、日本本土の将来が一日延びることを目的として戦った。
そんな硫黄島の側面は知る機会は少ないが、本書はそんな硫黄島の周知に貢献できるものだ。
なお、硫黄島があまり語られず、上陸も厳しく制限されている理由のひとつに「沖縄は唯一の日本国土に上陸された舞台」という便益が発生する被害者ポジションを取りたい勢力があるからと思っている。
完全に邪推ではあるが。
<目次>
プロローグ 「硫黄島 連絡絶ゆ」
第1章 ルポ初上陸――取材撮影不可の遺骨捜索を見た
第2章 父島兵士の孫が硫黄島に渡るまで
第3章 滑走路下遺骨残存説――地下16メートルの真実
第4章 情報公開請求で暴いた硫黄島戦後史
第6章 戦没者遺児との別れ、そして再上陸へ
第7章 硫黄島の元陸軍伍長「令和の証言」
第8章 硫黄島ノ皆サン サヨウナラ
エピローグ 「陛下、お尋ね申し上げます」