「あなたが知らない科学の真実」スチュアート・リッチー
<所感>
非常に良質の本。
科学的という際のエビデンスとなる実験結果や論文等には単純な誤りはもちろん、曲解、不正、バイアスがあることを指摘する本。
特に論文においてその信頼性が担保されない点が、科学者自身の性格の欠陥だけではなく、科学のシステムの欠陥に基づくと指摘することが本書の鋭い視点である。これは科学にとっては不都合な真実だろう(科学者にではなく、あくまでも科学にとって)
論文では査読と呼ばれる専門家によるレビューがあり、査読をパスすることが論文が論文の地位を得る過程だ。
しかし査読は必ず正しいとは限らないし、ミスや矛盾を見つけたとて査読者の対価は何もない。
一方でひとたび論文がサイエンスやネイチャーなどの一流学術雑誌に掲載されると執筆者は一気に一流科学者の仲間入りだ。
この非対称性が科学のシステムの欠陥のひとつ。
科学は人間の活動である限り、人間の欠点か刻み込まれているという言葉は重い。
ということで論文があるから実験結果があるからと、その結果を金科玉条のごとくエビデンスとするのは気を付けましょうということだろう。
特に心理学的実験には。個人的には心理学系の考察は結果ありきの曲解がほとんどではと考えている。
注:なお、大前提として科学者には敬意を持っています。
<目次>
第1部 「あるべき」と「ある」
第2部 欠陥と瑕疵
第3部 原因と対処法
付録 科学論文の読み方