「ランニングの処方箋 - 医者の僕が走る理由」大槻 文悟
<所感>
マラソンやトレランの経験者必見。非常に面白い。
著者はマラソンサブ3、トレイルでは信越五岳110kmで準優勝の経歴をもつ京大医学部出身の脊椎外科医。
本人は終始謙遜しているが、ガチランナーである。
まず特筆べきは前書きがIPS細胞でノーベル医学賞受賞の山中伸弥先生であること。
京大とランニングつながりらしい。
こんな方が一筆を寄せるランニングの本は普通は無い。
医者の見地というより科学的データやエビデンスに基づいてランニング(特にフルマラソンとトレラン)のアプローチを述べている。
補給食にたんぱく質をとってもレース中に筋肉は修復されないので意味ない、とか。
また自分自身のトレーニングデータをそのエビデンスに重ね合わせ検証しているが、この点は自分のような一般的市民ランナーにも参考になる点が多々あり。
この辺のデータは参考になる。
・トレランレースの難易度の目安は「距離(km)+累積標高(km) x 9~10のkm」
例:100kmで累積標高4000mなら100+4x9~10=136~140kmのロードと同じ。
・傾斜が急になると必要エネルギーは大きくなる。
傾斜10、15、20、30%では平地に比べて、1.7倍、2.1倍、2.6倍、3.7倍。
・糖質の必要量:レースタイム18時間以上→250kcal/h、12時間→200cal/h、6時間→100cal/h。
著者はアラフィフ。しかしこの年齢になっても、特にウルトラマラソンやトレランは研究データがすくなく、寧ろ伸びしろ満載。
何よりも今が一番速く走れると感じているとか。
この姿勢を見習ってランニングライフを続けたい。
ちなみに本書ではトレランのトップランナーの西村広和、丹羽薫選手のインタビューがある非常に面白い。
願わくばここに同じ京大医学部出身でUTMF2013を優勝者の原良和選手のインタビューも載せて欲しかったところだ。
<目次>
序章 僕が走る理由
第1章 人は走れるように進化した
第2章 健康と長寿
第3章 これから走ろうと思っている方へ
第4章 運動生理学の基礎知識
第5章 フルマラソンへのアプローチ
第6章 フルマラソンの向こう側
第7章 ランニング障害と加齢
終章 脊椎外科医の僕と走る僕