<所感>
現代美術において「キュレーター」の重要性が認識されて久しい。
この理由は「陳列」と「展示」の違いを認識することが手助けとなる。陳列はモノ(作品)そのもの。展示はモノの情報の再構築。
こう考えると、美術の古典作品はもう十分にさまざまな情報が咀嚼されており、その意味ではキュレーターは現代美術特有のものだ。
情報の再構築は視野を広げると、知的生産技術の一端ともとらえられる。そうするとキュレーションは現代美術だけではなく、本書で述べられているような7テーマにも展開できるという見方は新鮮であり、参考となる。
ただし「国策」の章はひっかかる内容である。戦後教育の逆説的賜物とも理解しているが、その「国策にキュレーション」という切り口が特徴的である一方で、もやもや感も残る。この所感の所以は本書の本質とは離れるものなので割愛。
<目次>
序章 展覧会企画と情報検索
第一章 「価値」のキュレーション
第二章 「文脈」のキュレーション
第三章 「地域」のキュレーション
第四章 「境界」のキュレーション
第五章 「事故」のキュレーション
第六章 「食」のキュレーション
第七章 「国策」のキュレーション
終章 展覧会――情報処理としてのキュレーション