「天安門ファイル―極秘記録から読み解く日本外交の「失敗」」城山英巳
<所感>
1989年6月4日の天安門事件の前夜とその後の日本の判断の考察のために、当時の外交官の極秘記録を丹念に振り返った本。
本書は日本の判断を批判するものではなく、どうしてそのような結論に至ったかのかに着眼を置いている。
ポイントは以下。
①チィナスクール外交官は天安門事件が起きても中国を「自分たちにとって望ましい中国」になりうるとみていた。
②戦争の呪縛から逃れられず中国共産党に配慮ばかりした。
しかし①は人権侵害軽視だし、②は支那事変(日中戦争)の実態をみると中国共産党のプロパガンダにやられていると言える。
当時の判断は当時の段階でベストだったとしても、やはり現状を鑑みて判断の是非は振り返る必要がある。
官僚組織の無謬性に走ってはいけない。
現状の中国共産党の振る舞いを虚心坦懐に見れば、決断は失敗だったと認めざるをえないだろう。
そしてテレビは毎年、夏になると毎年同じような視点の戦争特集の番組が多いが、現実の脅威を踏まえた番組を作ってほしいもの(期待していないけど)
<目次>
第1章 北京戒厳令の極秘記録
第2章 「六四」は必然だった
第3章 外務省の「無策」
第4章 北京「内戦」下の日本人
第5章 日本にとって「望ましい中国像」
第6章 米中は裏でつながっていた
第7章 日本の「敵」は米欧