「戦争とデザイン」松田行正
<所感>
「デザイン」の観点で戦争を捉えた本。「デザイン」とは、色でありシンボル・マークであり標語・フレーズである。
ここでやっぱり主体となるのは第二次世界大戦におけるドイツのナチスである。
戦争の悪役の話になるとナチスが筆頭ではあるが、本書では文化大革命にも言及している点は新鮮。
(文化大革命の犠牲者数は諸説あるが、ナチスのそれよりも一桁上だろう)
ドイツはその責任をナチスに押し付けているが、ナチ党は民主主義の投票で生じた政権。
そうなるように大衆を動かし、押し進めるためには何からのDriving forceがあったはずで、そのひとつがデザインの観点であったという。
「デザイン」で注意すべきはすべきは何よりも「ことば」だろう。
ことばで重要なのは、そのことばを唱える側の意味と受け取り手側の意味である。
本当の意味を理解しないままそのことばの表面上のみを捉えることは、結果的に扇動されることにつながる。
本書ではこう語られる「中国の習近平は社会主義的価値観として「正しい文化」と最近唱えはじめた。」
この“正しい”は誰にとってどんなものを意味するか。
そこに目を向けずして正しい価値観ということばを咀嚼した瞬間に、自分がデザインされたことになる。
<目次>
1 戦争と色
2 戦争としるし
3 戦争とことば
4 戦争とデザイン