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【読書】「EV推進の罠―「脱炭素」政策の嘘」

「EV推進の罠―「脱炭素」政策の嘘」加藤 康子/池田 直渡/岡崎 五朗

 

<所感>

日本の将来を考える上で必読の書。

EV=脱炭素の救世主という決めつけをロジカルに分析している。

 

着目すべきは以下の点。

①脱炭素のための選択肢をEVとすることは危険。選択肢にはハイブリッドなどの多様性を。

②EV化のためには発電や充電設備の整備が不可欠。

③日本政府や政治家は日本の自動車メーカーや国民のために戦え。金を出して、口を出すな。

トヨタの社長の「規制、法制化の前に技術の選択肢を増やせ」という発言はとても重要。

 

ガソリンなどの内燃機関の車やハイブリッドは日本メーカーの独壇場。

EV至上主義の絶対化はこのルールチェンジの様相を呈している。

またEV化の実現には、発電設備や充電施設というインフラ整備が不可欠。

EV化の推進では、脱炭素の名目がある以上、発電の選択肢は再エネか原子力となるが前者では到底今後の需要量は賄えない。

(この点から反原発を主張しつつEV推進を唱えるのは矛盾となる)

 

EVはあくまでも脱炭素の選択肢の技術のひとつであり、EV化100%はどこまで現実的か。

海外の既存の自動車メーカーはこの点をよく理解して巧みに発言している。

 

例えば2021年「ベンツ「2030年完全EV化宣言」(https://toyokeizai.net/articles/-/443664)というニュースが報道された。

 

しかし、この発言の原文には、末尾にwhere market conditions allow(市場の条件が合えば)という大前提がある。この前提は決して走行距離が長いEVができることではないはずだ。

Germany’s Daimler said Thursday that its Mercedes-Benz brand would “be ready to go all electric at the end of the decade, where market conditions allow.”

 

https://media.daimler.com/marsMediaSite/en/instance/ko/Mercedes-Benz-prepares-to-go-all-electric.xhtml?oid=50834319

 

<目次>

第1章 ガソリン車からEVへのシフトに乗り遅れてはならないの嘘

第2章 EVは環境に優しいの嘘“燃えるEV”―リチウムイオン電池の革新なしに、本格的なEVの普及はない

第3章 EV推進は株価のため?テスラ&イーロン・マスクの功罪―EVが増えてもCO2は減らない

第4章 中国EV最新事情!「中国製造2025」を読み解く

第5章 テスラの何が凄くて何が駄目なのか?EVと自動運転の真実

第6章 欧州が仕掛けるゲームチェンジの罠―迫るLCA規制の実態

第7章 トヨタという企業の真実 フォルクスワーゲンとEUのトヨタ潰し

第8章 パリ協定の嘘!実現不可能なCO2削減目標を掲げるのはなぜか?

第9章 日本の経済安全保障に問題あり―日本にEV成長戦略はあるのか?

第10章 クルマに乗る豊かさと人間らしさ