「青春をクビになって」額賀澪
<所感>
あの子やあの人へのトキメキ
将来に対する期待
若さがゆえの根拠なき自信
本作はそんな青春にありがちな要素は皆無である。
あるのはポスドクの雇止めを前にした30代半ばのポスドク主人公の話。
そして専門は古事記。
見事にビジネスからは一番遠い学問がチョイスされている。
主人公は40代半ばの同じ境遇の先輩ポスドクを目の前にして自分の人生を問う
これまで培ってきた研究を捨てて食べていくことができる仕事に就くことを考える。
そのデッドラインが30代半ばであり、「社会人」になるまでのモラトリアム期間が青春として書かれている。
やりたいことをいつまで追い続けることができるのか。
それは本人によるところが大きいが、時代や家族の支えという面も多い。
やりたいことを続けることが幸せなはずなのに、それに向かうがあまり自分を苦しめる。
今日もどこかのポスドクの嘆きが聞こえる。
これはポスドクに限らずで、本作にでてくるようなアニメーターもそうかもしれない。
そして毎朝通勤する社会人も。
青春は悲哀を伴う時期である。