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【書籍】「エネルギー」(上下)黒木亮

「エネルギー」(上下)黒木亮

 

<所感>

2008年発刊。国際的な資源ビジネスの当時の最前線を書いた経済小説

圧倒的な情報量と取材力、そこに自身の実務経験が加わった黒木ワールド全開。

 

主に3つのテーマをもとに小説は進む。

・サハリンの巨大ガス田開発サハリン2プロジェクト(本書ではサハリンBと記載)(これは昨年夏に三井物産三菱商事の出資継続がニュースとなった)

・イランの油田開発案件

・石油ディリバティブ取引

 

特にサハリンBでは担当する主人公の商社マンの妹が環境NGOの立場で、ガス田開発を糾弾する点はこの手の開発において象徴的な側面を表現している。

環境NGOの主張が全て間違っているとは言わないが、どこかで折り合いはつけないといけない。

(ともするとNGOの主張が政治的側面を帯びるが本書では触れられていない。そこは上手い)

 

ただし、主人公が最後に発する言葉が全てと思う。

「俺たちがやらなけりゃ、誰が日本のエネルギーを確保するんだ?」

 

エネルギーの確保は電力の確保に直結する。その電力を甘受してこそ現代社会が成り立っている。

そんな甘みを受けながら一方的な否定は実務的と言えない。

エネルギー問題はここがポイントであり、その解決策のひとつは仕入れ先や発電方法の「分散」であろう。

 

そして本書の舞台は1990代後半から2010年手前という平成真っ盛り。

平成のという時代が手に取るように書かれているのも本書の醍醐味。

そして平成の特に前半の携帯電話もない時代すっかり大昔に感じることと言ったら。。