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【書籍】2020年6月30日にまたここで会おう 瀧本哲史伝説の東大講義」瀧本哲史

「2020年6月30日にまたここで会おう 瀧本哲史伝説の東大講義」瀧本哲史

 

<所感>

2019年に47歳と若くして亡くなった著者が、2012年の40歳の時に東大で講義をした内容。

自分が40歳の時にこんなことは5%も言えないなあと思いつつ、そもそも本書は10代~20代向けの本であるが、それ以上の世代にも参考になる点・心に留めておく点がある。

 

1)教育の役割は他の見方、考え方があり得ることを示すこと。

 この観点から歴史学や美学、文学といった一見いmすぐに役立ちそうにないことは、実は物事を考えるときの参照の枠組みにとても重要。

2)何かやるときにアイディアにそこまで価値はない。それをやるメンバーの実行力が遥かに重要。

3)パラダイムシフト≒世代交代。本当に世の中を変えるような事業や大きな変化を生み出す人は基本的に若者。

 

30代以上には世代交代の定義を謙虚に受け止めることが必要だろう。

そして若い人が実行することをサポートする(=邪魔をしない)ことが、やるべきことの重要な一つである。

 

 

【書籍】「変な家」雨穴

「変な家」雨穴

 

<所感>

不思議系かつ独創的Youtuberの雨穴(うけつ)氏の作品。

結論としては同タイトルの動画の方が完成度が高く、小説版の本書は後半が冗長的である点が否めない。

 

しかし一つの間取りから、違和感を覚えて、妄想とも言える仮説や考察の生み出し、事実に迫る。

この新鮮な切り口だけでも一読の価値はある。

 

多作ではないが雨穴氏のYoutubeの世界観は月並みだが唯一無二。

昭和の風情にジェンダーレスの声。そしてそれが出オチではない点がとてもすごい。

 

【書籍】「教育格差の診断書―データからわかる実態と処方箋」川口俊明 編

「教育格差の診断書―データからわかる実態と処方箋」川口俊明 編

 

<所感>

日本の省庁で最も不要なところは文部科学省だと考えているが、この本のようにデータを踏まえた教育格力の是正を講じることができるとその存在意義があると言えるかもしれない。そんなことを感じる本。

とても良書。

 

教育格差の問題が話題となる昨今だがその実態究明はとても表面的。

 

理由は主に①~④でありこれらが絡みあっている。

①個人保護やプライバシーの観点で子どもの社会属性の収集が難しい。

②学校では平等思考が強く、差がある可能性がある行動を避けたがる

③調査するに統計的分析に値する内容や継続的なデータが少ない

④そもそもこの手の問題に関して統計的アプローチができる研究者が少ない

 

しかしこの根本は日本の教育をどうしたいかというグランドデザインがないことだろう。

ゆえに欧米と比べて学力調査の質がとても低い(単に、何かのテストの点数を比較するだけ)

 

また、④はとても問題だ。

「朝食を食べる子どもの方が、算数のテストの点が高い」という調査結果を耳にする。

これは相関関係を明示しているだけで、因果関係とは無関係であるはずだが、短絡的に朝食を食べれば算数の成績があがると解釈してしまうことが多い(特に評論家)

朝食が算数の点数に関係するかは、朝食を食べている子どもたちの中で差はあるのか、朝食を食べなくなると点はどうなるのか、その逆はどうか。複数の検証が必要なはずだ。

そしてそもそも「どんな目的でそのデータを取得したのか、その分析はどのように統計処理されているのか」。

データが全てではないが、データも踏まえて論じないと教育格差は解消できないだろう。

 

このかじ取りを文部科学省に期待したいが、、果たして。

 

<目次>

第1章 日本の教育行政が実施する学力調査の問題点

第2章 学力調査を分析するための基礎知識―朝ご飯は学力に繋がるか?

第3章 進級しても変わらない格差―児童間・学校間における格差の平行推移

第4章 学習時間格差を是正するには―子どもの環境差に応じた働きかけ

第5章 小学生のグリット(やり抜く力)格差の推移

第6章 学校文化と教育格差―日本社会に文化資本概念をどう適用するか

第7章 アンケート調査の落とし穴―客観的な数値データは正しいか

終章 「教育改革やりっ放し」のループを抜け出すために

【書籍】「解きたくなる数学」佐藤雅彦

「解きたくなる数学」佐藤雅彦

<所感>

ピタゴラスイッチ」の生みの親(とそのチーム)が作成した数学問題集。

もっとも数学問題集というよりも、算数というか数字や図形ゲームの様相が強い。

 

最後の問題「問23 タイルの角度」は本書を作成のきっかけとなった問題。

ぱっと見て簡単そうだが、なかなか解けない。ムムムと15-20分粘ってやっと説いたが、日ごろ使っていない脳みそを使った感覚。

この問題はきっと中学受験経験者なんかはさらっと解けるのだろうな。。

 

そいや、先日「三角関数よりも金融経済を学ぶべき」といった国会議員の方がいた。なんという発言だろう。

現代金融における超重要式(ブラック–ショールズ方程式)はバリバリの偏微分方程式

そして微分には三角関数が必須ということはご存じないのだろうか?

日常生活で「sin,cos,tanを使わない」のと、「少なくとも使われていることを知っているので重要だと思う」は全然違う。(電気も三角関数が流れない)

もし三角関数が重要ではじゃないというのなら電気もスマホも何もない生活をしてから言わないと。

 

ただしだからといって全日本人が偏微分方程式まで理解しないといけないとは思わない。

大事なのは、そんな学問が駆使する人がいて世の中が成り立ってその恩恵を受けていると思うこと。

 

<目次>

■目次

問1 ナットは全部で何個あるか

問2 大中小のチョコレート

問3 波止場の杭

第1章 驚くなかれ ここと ここは 同じ大きさ──同じ面積

問4 バスの窓

問5 お母さんのチーズ分割法

第2章 変わらないものに注目すると 「ある真実」が見えてくる──不変量の問題

問6 6人の子供と6個の枠

問7 黒板の0と1

問8 5つの紙コップ

第3章 鳩の数が 巣の数より多いと 何が起こるか──鳩の巣原理

問9 東京の人口と髪の毛

問10 たて・よこ・ななめの和

第4章 世の中を 敢えて 偶数と奇数のふたつに分けてみる──偶奇性の問題

問11 7枚のオセロ

問12 コインとりゲーム

問13 サイコロの回転

第5章 ある地点から ある地点に行くなら 直線で行くのが 一番近い──三角不等式

問14 横浜中華街

問15 十字路の渡り方

第6章 複数の条件が 答えを決定づける──条件の重ね合わせ

問16 ケーキとプレート

問17 4つの道具

第7章 比較しにくいものを 比較するには──比較の問題

問18 寛永通宝

問19 31^11と17^14

第8章 論理的ドミノ倒し──数学的帰納法

問20 2人の負けず嫌い

第9章 解く喜び ここにあり──修了問題

問21 ジョンとメアリの背くらべ

問22 タイルの隅

最終章(おまけ) この本は この問題から始まった──はじまりの問題

問23 タイルの角度

この本はこのようにして生まれた──あとがきにかえて

【書籍】「アイヌ先住民族、その不都合な真実20(改訂増補版)」的場 光昭

アイヌ先住民族、その不都合な真実20(改訂増補版)」的場 光昭

 

<所感>

政治的イデオロギーが先行すると歴史の振り返りは結論ありきとなることがよくわかる。

特に日本にはある種のイデオロギーの結論はほぼ同じである。

「日本が悪かった。謝罪と賠償を」

具体的な事例は従軍慰安婦朝鮮人強制連行の虚構の左翼運動で見られる。

このイデオロギーは「少数者は弱者→弱者は差別される→よって被害者」というロジックから成る。

 

アイヌ史においても同様のイデオロギーが働いて今、果実が実りつつある。

その実態にメスを入れた本。もっと読まれてほしい本。

 

特に「その8:先住民族に関する国連宣言」の章では「琉球人の自己決定権を認めろ」とのこれまだ日本を分断する運動と構造は瓜二つ。

このような主張ができるのは日本の言論の自由の賜物とは言えるが、嘘はいけない。

 

いわゆるアイヌ問題とは「アイヌの人々に対する差別問題」ではなく「アイヌの再別問題を生み出す反日イデオロギー活動が暴走しているという問題」である。

 

このような左翼イデオロギー運動を止めるためには、純粋に史実に向かいあることがスタートであり、そしてゴールである。

 

アイヌは弱者であり、差別の対象だった。そんな理想や幻想を持つ方には砂沢クラ(明治30年生まれのアイヌ女性)が自分の日記などをもとに書いた一代記「クスクップ オルシペ私の一代の話」に書かれた以下の文章をどうぞ。

 

(抜粋)

私は、これまで何度か「アイヌ」と言われていじめられましたが、いじわるをする人はどういうわけか教育もろくに受けられず、下働きのような仕事をさせられている人たちばかりでした。…学校の先生とか医者など教育を受けた人、もののわかった人は、私たちアイヌを本当の日本人として尊敬してくれました。山の中で働いている営林署の人、発電所の人、炭鉱の人も少しも威張らず、私たちを大事にしてくれました。

(抜粋終わり)

 

<目次>

不都合な真実

その1:コシャマインの乱

その2:シャクシャインの乱

その3:子供たちの東京強制移住

その4:樺太アイヌ強制移住事件

その5:千島アイヌ強制移住

その6:北海道旧土人保護法

その7:アイヌは平等社会?

その8:先住民族に関する国連宣言

その9:アイヌ先住民族国会決議

その10:アイヌ先住民族国会決議で遠のいた北方領土

その11:アイヌ先住民族運動

その12:アイヌは北海道の先住民族

その13:知里真志保

その14:喜多章明

その15:バチェラー八重子の詩

その16:砂沢クラさんの本

その17:チェーホフ、ブッセ、ゴロウニン

その18:ホーレス・ケプロン

その19:イザベラ・バードが見たアイヌ

その20:イデオロギーの自己膨張的拡大

【書籍】「資本主義の再構築―公正で持続可能な世界をどう実現するか」レベッカ・ヘンダーソン

「資本主義の再構築―公正で持続可能な世界をどう実現するか」レベッカヘンダーソン

 

<所感>

資本主義は格差の元凶。ついては格差是正して平等な社会実現のためには資本主義から脱却して、共産主義社会主義に。

本書は決してそんな内容ではない。(そんなロジックが成り立つ世界もあるだろうが)

 

ここでは資本主義がもたらす問題の主因は「企業が株主価値の最大化を唯一の義務とすること」としている。

この起点から資本主義の再構築のステップとして本書が掲げるステップは次の5段階

→1)共有価値の創造、2)目的・存在意義主導型の組織を構築する、3)金融回路の見直し、4)協力体制を作る、5)社会の仕組みを創り変えて、政府を立て直す

 

ビジネスパーソンとしては特に2に注目したい。

どんな小さなチームであっても目的・存在意義の再定義はエネルギーを必要として、決断には非難されるリスクが伴う。

ただし、目的志向の組織をつくろうとする、それ自体が共有価値を生み出す行為であるとのことで、そこに希望を感じる。

その希望のためにはまずは1)の提起、そして行動。

 

どんなことも最初の一歩が肝心。

 

 

<目次>

第1章 「事実が変われば、考えを変えます。あなたはどうされますか」―株主価値は過去の考え

第2章 「資本主義を再構築する」実践―世界で最も重要な対話へようこそ

第3章 資本主義の再構築には経済合理性がある―リスク低減、需要拡大、コスト削減

第4章 深く根ざした共通の価値観―企業の目的・存在意義に革命を起こす

第5章 金融の回路を見直す―長期重視の考え方を定着させる

第6章 板挟みのなかで―協力し合うことを学ぶ

第7章 豊かさと自由の源泉を守る―市場、政治、資本主義の未来

第8章 変化という雪崩のなかの小石―世界を変えるための自分なりの道を見つける

【書籍】「なぜ脳はアートがわかるのか」エリック・R・カンデル

「なぜ脳はアートがわかるのか」エリック・R・カンデル

 

<所感>

大学生時代に微生物をつかって金属のナノ粒子を合成する研究をした。この時の微生物は異化的金属還元細菌と呼ばれるもの。この「還元」とは物質が原子を受け取る化学反応のことで高校で習うそれである。

しかし「還元」は根源的なものに戻すという意味もあり、その意味をもとにした考え方が「還元主義」だ。

 

閑話休題

 

脳科学者が学習や記憶の研究に際して還元主義を採用していること。

一方で(本書に出てくる)アーティストが還元主義的アプローチで芸術的想像性の基盤を探求している。

この点で脳とアート両者に還元主義なる架け橋があると本書は指摘する。

 

具体的には…

還元主義に立脚した脳研究→単純な事例にしぼって視覚プロセスを描写

還元主義的な芸術家の着目点→フォルム、線、色、光に着目

大雑把にいうと単純にすると脳がよく理解できる、線やフォルムと言った単純な要素は脳が理解できるということか。

 

特に8章(脳はいかにして抽象イメージを処理し知覚するのか)は興味深い。

抽象芸術を見ることの喜びは網膜への感覚刺激(=絵を見る)がそれに結びついた記憶を想起する、つまり、鑑賞者がそれぞれ独自の経験に基づいてを補完する知覚体験からくるという。

 

さあ、美術館に行こう。

 

<目次>

1ニューヨーク派で二つの文化が出会う

2アートの知覚に対する科学的アプローチ

3鑑賞者のシェアの生物学

4学習と記憶の生物学

5抽象芸術の誕生と還元主義

6モンドリアンと具象イメージの大胆な還元

7ニューヨーク派の画家たち

8脳はいかにして抽象イメージを処理し知覚するのか

9具象から色の抽象へ

10色と脳

11光に焦点を絞る

12具象芸術への還元主義の影響

13なぜアートの還元は成功したのか?

14二つの文化に戻る